「チビ〜、おいで、毛を刈るよ〜」
まるで子どもたちの散髪をするかのように声をかけたのは、
今回、毛刈りにお邪魔した蒜山のチーズ職人・竹内雄一郎さん。
「1年ぶりの毛刈りだから」と苦笑いしながら、バリカンと鋏で優しく一頭一頭刈っていきます。
5頭全部を刈り終えた時には汗だくでした。
チーズなのになぜ羊?
不思議に思いますよね。
実は竹内さん、日本で唯一の羊のリコッタチーズの作り手なんです。
正確にいうと羊と山羊の乳で作るリコッタです。
岡山県の北部、蒜山高原で羊と山羊を飼いながら、その乳でチーズを作り、
併設のカフェでピッツアやパスタ、デザートにして提供されています。
リコッタチーズというのはチーズを作った後に残る乳精(ホエー)にミルクと塩を足し加熱して固まったものをザルでふわっとすくい上げたもの。日本のおぼろ豆腐みたいな感じといえば、分かるでしょうか。
正式にはリコッタフレスカ。イタリアではこれを羊と山羊のミルクで作るんだそうです。

木のトレイに乗っている方が羊と山羊のリコッタ。とっても美味しい♪
牛乳のリコッタと比べて、独特の風味とコク、甘みがありました。
この羊と山羊のリコッタに魅せられて、チーズ職人になった竹内さん。
イタリアの修行時代と同じ製法で作っているそうです。
ただ、日本では乳用種の羊は限られていて、
ここで飼われているフライスランドとあともう一つくらいしか手に入らない。
羊の飼育を始めて今年で4年。やっとリコッタが作れるくらいの乳量が絞れるようになったそうです。
それでも羊5頭山羊5頭で採れるミルクは1日15リットル。
製品のリコッタにするとまだ6個程度と貴重です。

こちらがフライスランドの羊たち。
原産はオランダで、日本では当然のことながら絶対数が少ないため雑種です。
そのため毛質は本当にさまざま。
今回は傷みの少ない若い羊のペコとチビの羊毛を一部頂きましたが、
ペコはまるでウエリッシュマウンテンのようにケンプのたくさんある毛質だし、
チビはチェビオットのような弾力のある羊毛です
もともと乳用種の羊は乳に栄養分が行ってしまうため、年を重ねると毛質は悪くなるんだそうです。
なんだか自分の出産・授乳期を思い出します(笑)乳を作るって大変なんですよ!

竹内さんご夫婦にとって、10頭の羊や山羊たちはまるで家族。
以前、私がこのブログで紹介した絵本「かえでがおか農場の仲間たち」を彷彿とさせる
ほっこりした牧場暮らし。
特にチビは母羊が育児放棄したために竹内さんが母代わりになってミルクを与えて育てたそうで、
今も側にいくと、顔をスリスリしてきたり、
小屋から帰ろうとすると車に飛び乗って来たりすることもあるそうです。
「チビは毛刈りも嫌がらずに大人しく刈らせてくれたから、きれいなフリースがとれましたよ」と竹内さん。
このチビのフリースを頂いて、作品にすることになりました。
毛刈り作業の手伝いで、後ろ足を押さえていると、お乳の近くから、
あの独特の匂いがふわっと漂って来ました。ランチで頂いたリコッタチーズと同じ香り。
これまでホームスパンをやっていても、使っている羊毛の羊の暮らしを実際に見たことも、
毛刈りに携わったこともありませんでした。
最初から携わった羊の毛でいつか作品を作ってみたいと思っていたのです。
それが今年、かないそうです。
このご縁を繋いで下さった円山ステッチの佐野明子さんに感謝。
そして快く羊毛を分けて下さった竹内さんに感謝します。


竹内さんのお店イルリコッターロ
posted by シンドウヨシコ at 14:23|
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