
竹内さんの牧場の羊は現在5頭。
品種はオランダ原産のフライスランドという乳用種です。
山羊に近い体型で、他の羊に比べてお乳が大きいのだそうです。

乳用種といっても羊の絶対数が少ない国内での繁殖には
他の品種を掛け合わせていかなければならないので、
純血種ではなく、羊毛も一頭一頭が個性豊かです。
ツンツンするくらい固い毛(ケンプといいいます)が
たくさん交じっている毛もあれば、
マフラーに使っても大丈夫そうな柔らかい毛もあり、
びっくりするくらい、見た目も肌触りも違うんです。
今回、ホームスパンに使わせてもらうための羊毛を
毛刈りさせてもらいに伺った時、
最も柔らかくて織物に向いていそうだったのは「チビちゃん」の毛でした。

もともと乳用種はお乳に栄養が行ってしまうため、
毛質が落ちてしまうこともあるのですが、
3歳のチビちゃんはもともと毛用種の血が濃く出た羊だったのに加えて、
初産の今年、早くから乳房炎になってしまいお乳を出すのをやめてしまったため、
良い毛質のまま毛刈りができたようです。
それにチビちゃんは、母羊が育児放棄してしてしまったために、
竹内さん夫妻が母親代わりになってミルクをあげて育てた羊。
一番なついていて、今もそばに行くと、顔をスリスリしてきたり、
小屋から帰ろうとすると車に飛び乗って来たりすることもあるのだとか。
「『いつもきれいにしときなよ』と、いつもゴミをとってやるようにしていたので、
彼女はこれが大好きでわざわざ頭の周りに草をつけてきて
とってほしそうにするんですよ」と竹内さん。

確かにチビちゃんの毛は他の羊に比べて、
ゴミが少なくとってもきれいでした。
「人が育てたので、初めは人といる方が好きで
羊の和の中になかなか入っていけなかったんです。
そのため少し内向的で外に出ていきたがらない性格となって、
群れの中でもいつも最後尾に近いところにいて、
できるかぎり小屋でゆっくりするのが好きなんです。
だから汚れにくかったのかな」と竹内さん。
我が子のように温かい眼差しを向ける姿が目に浮かびます。
今回はこのチビちゃんの毛をマフラーとコースターに使わせて頂きました。
ぜひ竹内さんの温かな牧場に育った羊、チビちゃんの羊毛を見に来て下さいね。
「蒜山物語 ホームスパンとおいしい時間」展
2015.2.25~3.8(お休み2/27,3/2,6、私の在廊日2/25,28,3/1)
営業時間13時〜18時
円山ステッチ(岡山市中区834−1)086-238-7582

連載、次回は竹内さんの牧場作りについてもう少し触れたいと思います。